東京地方裁判所 昭和38年(ワ)2669号 判決
○当事者
原告
野見山繁敏
右法定代理人親権者父
野見山文雄
同母
野見山治子
右訴訟代理人弁護士
平沼高明
被告
株式会社内田商店
右代表者代表取締役
佐藤直
同
伊藤敏雄
右訴訟代理人弁護士
斉藤政信
○主 文
(1) 被告は、原告に対し金九五、三四九円及びこれに対する昭和三八年四月一九日以降右支払済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。
(2) 原告のその余の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は被告の負担とする。
(4) この判決は、第一項に限り仮りに執行することができる。
○事 実
原告訴訟代理人は「(1)被告は、原告に対し金一〇九、七七三円及びこれに対する昭和三八年四月一九日以降右支払済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。(2)訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、その請求原因として次のとおり陳述した。
一、原告は、昭和三七年八月一八日午後五時頃、東京都港区芝三田四国町二〇番地先路上を自転車に乗車して進行中、反対方向から進行して来た訴外奥田奨運転の原動機付自転車(中央区第三九、三〇〇号)に衝突され、よつて加療約六週間を要する左膝関節部血腫の傷害を受け、原告運転の自転車を破損された。
二、本件事故現場は、見通しの悪い変形三差路であるから、訴外奥田は、交通の安全を確認し、除行すべき義務があるにも拘らず、これを怠り、漫然時速約三〇粁の速度で進行したため、本件事故を発生させたものであり、当時被告会社の業務に従事していたものであるから、被告会社は、同訴外人の使用者として、その損害を賠償すべき義務がある。(以下省略)
○理 由
一、(証拠―省略)を総合すると、原告の請求原因事実中第一項の事実(本件事故の発生及びこれによる原告の負傷)及び同第二項中本件事故が原告の主張するような訴外奥田の過失によるものである事実を認定することができる。
二、(証拠―省略)及び弁論の全趣旨を総合すると、訴外奥田は、被告会社の外交員で、車を使用して薬品販売の業務に従つている者であること及び本件事故当日は被告会社所有の原動機付自転車を運転して被告会社の業務に従事し、会社に帰る途中本件事故を発生させたものであることを認定することができる。右認定に反する証拠はない。そうしてみると訴外奥田は、被告会社の業務執行につき、その過失により本件事故を発生させたものということができるから、被告会社は、よつて生じた損害を賠償すべき義務がある。
三、損害。
(一) 物的損害
(証拠―省略)を綜合すると、原告は本件事故により蒙つた負傷を治療するため、本件事故当日から昭和三七年九月二八日まで東京都済生会中央病院で治療を受け(この間三三日間入院)(1)入院治療費として金一八、五六五円、(2)入院治療に関連する諸費用として合計金六、九八四円((イ)座椅子購入費八〇〇円、(ロ)父母附添のための費用金六、一八四円)、(3)栄養費として少くとも金四、〇〇〇円、(4)病院から学校への通学自動車代として少くとも金二、九〇〇〇円、(5)学業補習費として金六、〇〇〇円、(6)本件事故により破損した自転車の修理代として金五、四〇〇円合計金四五、三四九円を要した事実を認めることができる。以上の認定に反する証拠はない。
原告は、右の外(2)の入院治療に関連する諸費用として(ハ)看護婦謝礼金一、五〇〇円、(ニ)パジヤマ購入費金一、五〇〇円、(ホ)入院見舞に対するお返し品代金九、〇〇〇円、(ヘ)その他の費用金三、九二四円を要したと主張するけれども、入院或は退院に際し看護婦に謝礼として交付される現金又は入院中見舞を受けたことに対するお返しの物品等はいずれも入院中種種世話になつたこと又は見舞を受けたことに対する患者の感謝のしるしとして厚意的に贈与されるものであり、またパジヤマ購入費の如きは入院するとしないとに拘らず生活上当然必要な経費であつて、必ずしも入院に必要な経費と解し得られないから、いずれも本件事故による損害とは認め難く、同(ヘ)の費用についてはこれを認めるに足りる証拠がない。
(二) 慰藉料
原告本人尋問の結果によると、原告は、昭和二二年五月一九日生で当時中学校三年生であつたこと、本件事故以前は運動(特に陸上競技)の選手であつたところ、本件事故による負傷のため、現在でも足が思うように動かず、すぐに疲労を覚える状態であることが認められ、この事実と前認定の本件事故の態様、訴外奥田の過失、原告の負傷の程度及び被告会社が本件事故の解決のため何等の努力も払つた形跡のないこと等を考慮すると、原告が本件事故によつて受けた精神的打撃に対する慰藉料は、原告主張の金五〇、〇〇〇円を下らないものと認める。
四、そうすると原告の本訴請求中、前項(一)の物的損害金四五、三四九円、(二)の慰藉料金五〇、〇〇〇円合計金九五、三四九円及びこれに対する本件訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和三八年四月一九日以降右支払済に至るまでの年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから正当としてこれを認容し、その余は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条但書仮執行の宣言について同法第一九六条第一項を適用して主文のとおり判決する。(裁判官 茅沼英一)